ねこのひたい

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エンジニアリングマネージャーをやめかけ、フリーランス武者修行して復活した1年ちょっとの振り返り

会社員を辞め、フリーランスエンジニアリングマネージャーとして武者修行した1年ちょっとの出来事、自分で感じた変化を忘備録として残そうかなと思います。

エンジニアもエンジニアリングマネージャーもやめようとしていた

2018年2月、私はエンジニアリングマネージャーをしていた会社をやめようと決めた。仕掛中の大きめのPJTが終わったらやめる意思を、思い立ったが吉日ということですぐ、リリース後のバタバタが落ち着いたらやめたいと上司に伝えた。そして7月にリリースを終え、8月で退職した。やめた理由はPJTがしいんどいとかではなかった。あのときは精神崩壊を何度か経験したけれど、自分やチームでやるべきだ!やりたい!と言ったことだったので、とても楽しかった*1。松岡さんから差し入れで頂いたケーキはとても感動して、こんな粋なことができる大人になりたいと思っている。

実は、2018年2月の時点ではエンジニアもエンジニアリングマネージャーもやめようと思っていた。私は当時ストレングスファインダーで最上志向が一番強かった。だからか、上記のPJTのような課題提起はやりたいしできるし好きだけれども、エンジニアとして本来一番大事であろう学習欲が全然なかった。マネージャーとして頭にインプットしていたのは「組織の三要素」だけで、あとは周りの人たちを教師および反面教師にしてがむしゃらにやっていただけだった。それでもそれなりと頑張っていたとは思うけれど、今考えれば無茶苦茶だなぁと思う。それなのに、一緒に頑張ってくれたメンバーに「あなたがマネージャーで良かった」なんて言われたりしてすごく嬉しかった。感謝しかない。

当時、私にエンジニアリングマネージャーとして秀でた強みはないし、慣れ親しんだ組織とプロダクトだからギリギリなんとかなっていると思っていた。つまり、私が出来ていることは再現性がないと考えていた。そして、学習意欲が低いならずっとエンジニアとして生きていくのはしんどくなっていくだろうと思っていた。あとはエンジニアやエンジニアリングマネージャーという仕事を今後もやっていけるか自信もなかった*2。くわえて、メンバーの1人と色々あって、心底凹んだりもした。エンジニアリングマネージャーになったことをきっかけに組織作りには関心があったので、エンジニアとしてのバックボーンを生かせて組織作りに携われる仕事、人事にジョブチェンジしようとしていた。

その後人事として内定をいただいたのだが、ちょうど同じ頃に業務委託として一緒に働かないか?とお声かけいただいた*3アウトサイダーという立場でエンジニアリングマネージャーをするという内容だった。人事にジョブチェンジをしようと考えていたが若干迷いも持っていた私に「やるべきこと(上のPJTのこと)をやるべきだと言える人も、やりきれる人も少ない。CTO目指してみたら?一緒に仕事してみない?」ということを言っていただけた*4。マネージャーとしての自分を嬉しい言葉で評価してもらったのは、これが初めてだった。また、私が前職で課題だと思っていたけど解決できなかったことをお話し、コーチングしていただいた。するすると自分ができていなかったことを認識できた。コーチングを知らなかったので、ものすごくびっくりした。そして、この人のスキルを奪いたい、一緒に仕事したい、エンジニアリングマネージャーとして他の組織でも通用できるのかラストチャンスで試してみたいと思った。そして、2018年9月にフリーランスデビューを果たした。内定を頂いていた会社さまには申し訳ありませんでした。。

本を読むようになった。きっかけは「人の10倍勉強しなさい」

私は学習欲がなかったため、本も継続的に読んでなかった。だからまずは本をたくさん読んだほうが良いと教えていただいた。最初の1ヶ月くらいは1日1冊読んで、要点をまとめるブログを書いていた*5

以前は、本を読むのが心底嫌だった*6。理由は、ただひたすらに面倒くさいから。まず選ぶのが面倒くさい。書いてあることを暗記しなきゃ、お金の分だけバリューを出さないととか、考えるのが面倒くさい。あとお金がかかる。

そんな人間が多少なりとでも本を読めるようになったのは、以下のようなアドバイスをいただいたからだ。

  • 本に書いてあることを全部覚えようとか身構える必要はない。1つでも学べることがあればそれで良いし、さらっと読んでつまらなければやめれば良い
  • 課題に直面したときに知識を仕入れるのと、事前に知識があって選択肢を持てる状態だとどっちが良い?
  • 今まで勉強してこなかったんだから、これから人の10倍勉強するつもりでいなさい
  • フリーランスは経費で本が買える

本を読むようになって、自身が今まで再現性がないと思っていたことを沢山の人が言語化していて、そして逆を言えば、私は言語化ができないから再現性がないと思っていたことに気づいた。再現性を得られるなら、どこでもエンジニアリングマネージャーできる!と思った。また、同じ事象に対して異なる視点から捉えることの癖がついた。

余談ですが、福利厚生で上限なく本が買える会社さんは素敵ですよね。それだけで読書(学び)のハードルがだいぶ下がります。

アウトプットをはじめた

上記で触れた言語化能力を上げるため、アウトプットを始めた。

言うほどできていないが、まずは書くことへの抵抗がなくなったのと、自分の抽象化、言語化能力の低さを実感できたのは良いことだと思っている。

アウトサイダーのエンジニアリングマネージャー?できるの?

フリーランスでエンジニアリングマネージャーをやってます」と言うと、エンジニアリングマネージャーをやっている人は大体「?」という顔をします。変ですよね。私もそう思います。

フリーランス時代に書いたブログは以下のようなものです。

nekonohitai.hateblo.jp

nekonohitai.hateblo.jp

どんな立場であろうとエンジニアリングマネージャーとして求められることは変わらないと思っていましたが、大きくことなるのは同じ会社の人間ではないし、ましてや上司や評価者でもないということだと思います。

それにより、以下のようなことが発生します。

  1. 社内情報にアクセスしづらい
  2. エンジニア部門ではない人からは知られていない、コミュニケーション手段がない(名前分からない、メールやチャットなどでの連絡手段がない)
  3. エンジニアリングマネージャーというロールではなく、社員という立場にのみ与えられる権限、情報がある
  4. 立場による鶴の一声戦法が一切使えない

まとめると情報が足りない、影響力がない、むしろ知られてすらいない、ズルが出来ない。3つ目に関してはロールで権限と責任と情報は統一したい(社外秘を除く)とネゴってみたものの、既存のやり方を変えるのはなかなか難しかったという印象です。

情報がないから、必死に取りに行く必要がある。人を知らない、知られていないから積極的にコミュニケーションを取る必要がある。影響力がないから、持てるように努力する、成果を出す必要がある。個人としても、チームでやることも強い共感を集める必要がある。要するに社員のときはする必要がなかった(あるいはもっと楽にできた)努力をする必要があった。

私はこの状況を制約のあるゲームみたいなものと言っていた。自分で縛りをつけてゲームをしたほうが燃える属性の人って一定いますよね。あえてこの武器でボスを倒すとか、連れて行くキャラのレベルに上限制限をつけるとか。私はそうではなくさっさと先に進みたい属性なのでゲーム世界ではやったことがないですが、リアルにおける制約ゲームは良い経験でした。自分がエンジニアリングマネージャーをする上で必要なものは何かをあらためて知ることができ、基礎練からやり直した感覚があるからです。制約のあるゲームは、プレイヤースキルを上げる!(マネージャーだけど)そして、そのような状況でやりとげたことは、大きな自信になった。

一方で「上司だったら言えなかった」と言われたことがあり、それは少し悲しかった。今後会社員に戻るので、そういう人もいるのかな。

 

つらくない?と言われたことがありますが、結構大変です。でも、刺激的な体験をさせていただけました。

個人へのアプローチを封じた

いきなり1on1など対個人マネジメントがフィーチャーされていましたが、私はフリーランス時代にはそれを封印していた。理由としては端的で、私が一緒に働いたメンバーには別の上司がいたからである。会社や上司としてメンバーにどうなってほしいという願いがあるだろうし、メンバーとしてもその相手が複数いたら困るだろうなという思考だった。だから、何か相談したいことがあったら言ってねというスタンスだった。

そのためあくまでチームを通して個人と接することに徹底した。結果として、以下のようなはたらきかけを通じてメンバーへも変化を求めてく形になった。チームへの働きかけだけでも人が変わっていくという実感と、チームビルディングの自信がついた。1on1ができるようになったら、鬼に金棒ではないのか(ちがう)。こちらも制約ゲームである。

それでも、「会社や上司がこのように言うけれど、チームではこのような話になっている」ということはたまにあったので、そのときは上司と相談したりした。

自分の変化

自分としても行動の変化や制約ゲームによる成長実感があったので、ストレングスファインダーをやり直してみた*8。赤字がニューカマーです。

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相変わらず学習欲がないのが残念でしたが、難しい状況下でチームとして課題をクリアしてきた実感と新たなストレングスが一致していると感じました。情報がないから必死に集めて解決していく戦略性。人に影響をあたえるポジティブ。生産性の高いチームを作るための個別化。一切学んでいなかった頃と比べるとエンジニアリングマネージャーっぽい素質がついてきたのかな…?と思います。

あとがき

アウトサイダーでエンジニアリングマネージャーをすることをおすすめしたいわけではなく、ただの振り返りです。かなり修行にはなりますが、いずれ「とはいえ社員じゃないと難しい」ことにぶつかるんじゃないかなと思います。

マネージャー、管理職の外注する流れって本当にあるんでしょうか?さらっと調べた感じだとPMはありそうでしたが、知っている方がいたら教えてくれると嬉しいです。同じような人がいるのかは興味があります。

blog.tinect.jp

ただ何よりも「本を読む意味なんてない」「アウトプットする意味なんてない」と思っていて、自分のスキルが他社で通じるのか悩んでいる、会社に不満があるけど転職できるのかなと思っている方(ずばり、過去の私です)。悩みや恐怖は、選択肢がないからです。そして知識がないと選択肢は持てません。ということがこの一年で一番学んだことかなと思います*9

また、私にこのような機会をくれて、たくさんご指導いただいた方に感謝です。来年はまた会社員がんばるぞ!

*1:超絶余談ですが、リリースが終わったら何かマネージャーっぽい良いことを言おうかなとか、みんなでガッツポーズとか青春っぽいことしたいとか考えてたんですが、放心状態で喜びすら表現できなかった

*2:過去記事でも触れていますが、女性エンジニア、エンジニアリングマネージャーは少ないのでとても未来が恐怖だった

*3:色々端折っています

*4:でも、未だにCTOになれるとは思えない

*5:こちら。業務が忙しくなってからこのペースとまとめの分量はつらくなったので、別の形で今はまとめている

*6:正直に申し上げると、今も特別に好きではない…。以前よりは気楽に読めるようになってきた。

*7:寄稿したっきりで皆さんとコミュニケーションを取れなかったのはもったいなかった…

*8:1.5年間隔で行いましたが、本当はもっと時間をあけてやるべきだそうです

*9:「転職の思考法」という書籍がおすすめです